CLILとアクテイブ・ラーニング第4回研究会のご報告

講師・スタッフも加えるとおおよそ50名の参加となった研究会は、多くの方から喜びの声や役立ったと言って頂き、盛会のうちに終了しました。
私からは、ことばの発達に関するいくつかの研究結果から、文字習得とは単なる言葉を覚えれば良いものではなく、知覚や概念の発達や社会的・身体的発達を経て初めて成しえるもので、脳内に壮大なネットワークを作ることであり、母語であっても簡単にできるものではなく、読み聞かせは、書記言語を母親に抱かれながら耳元で聞くことで「愛されている」と実感できる最大の動機づけとなっていること、その経験がその後の読字能力に大きな影響を及ぼすこと、そしてその母語の力が環境によってある程度外国語にも転移し、また言語力に関する脳内ネットワークは複雑であるため、多様な外的・内的要因を受けて新しい環境に適応していくこと、よって外国語も単に覚え込ませるのではなく、ダイナミックな活動実践が外国語習得のための脳機能の発達に寄与しやすい、という話をしました。
諸木先生と中村先生は、絵本の中でも良質のストーリーを用いて、児童に分かりやすく、かつ好奇心をそそる内容で、しかも豊富な活動に繋げており、まさに多様なCLIL活動に展開されていました。
諸木先生は、Joseph Had a Little Overcoatの絵本を使って、ペアでのワークシート活動や、洋服のパーツの絵を書いたりすることで内容を把握していきました。他にもSIGNS(標識)について外国の方が見てもわかるかを考えさせるなど、多感覚の活動でした。
中村先生は、ご著書の Lily and the Moonを使って、動物の単語、前置詞の単語、場所の単語を並べて、文のような形にして文を言う練習や、自分で好きなぬいぐるみを使って物語を再話する活動などをご紹介いただきました。またNational Geographic Learning の写真を使った異文化理解の授業など、拡がりのある活動をご紹介いただきました。お二人のお話で印象に残ったのは、思考は母語の日本語でしっかり考えさせるところでした。やはり深い思考には日本のようなEFLの国では、母語で考えることが重要で考えも深まると考えられます。
一方、長谷川先生は、反対に「良質」とは言い難いストーリー(Let's try1,2の物語)であっても、動物の足跡について考えさせたり、1日を自分に置き換えて考えたり、2年生に1シーンをペアで絵に表現して発表したり、見事に児童が好奇心とわくわく感をもって参加できる、授業を展開されていました。言わば、今一つの食材でも調理する人がうまければこんなにおいしい料理ができる、と思えるモデル例でした。
ご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。次回は来年3月2日を予定しています。

投稿: 安達 理恵