【褒める4】ある日の「褒める」実践記録

算数の時間が始まりました。
ノートに字を書くのが苦手な太郎くんが
ノートに日付とページ数を書いています。
私は、この太郎くんの行動を褒めて「強化」してあげたいと思います。
「偉いなあ!」
と言葉で褒めてあげようとします。
しかし、心の中で、私は「待てよ」と思うのです。
「『偉いなあ!』だけでは、何が偉いのかわかりづらいな」
そこで私は考えて
「もう書いてる!偉いなあ!」
ということにしようと心の中で思います。
これなら「先生は、すぐに書き始めたことを褒めているよ」というメッセージが伝わりやすくなります。
しかし、また「待てよ」と思います。
教室全体を見ると、日付とページを書き出しているのは、太郎くんだけではありません。他の子供たちも書き出しているのです。
さっきの言葉だと、誰のことを褒めているのか、不明確です。
他の子供たちも褒めてあげたいけれど、
今、この瞬間は「苦手なこと」を頑張っている太郎くんを、まず褒めてあげたいのです。
そこで私は、ページ数を書き終えた太郎くんの席に、そっと近づき、彼が書き終えたばかりのノートをちょんと指でタップしてから、
「もう書いてる!偉いなあ!」
と褒めてあげました。彼は視線を上げてニコッとしました。
私もニコッとしました。
よかった。伝わった!と私は嬉しくなります。
そして
「次郎くんも書き終わったね!三郎くんも早いね!花子さんもできたね!」「もう書き終えた人?」ザーッと手が上がって「みんな偉い!」
と続けました。
文字で書くとたくさんの時間が流れているようですが、
これは授業の最初のほんの20秒程度の場面です。
キーボードで入力しなくても
瞬間的に、いろんなことを考えたり、思ったりできるのが人間の脳のいいところですよね。
その分、私の場合、間違えたり、早とちりすることもありますが(笑)。
この日の授業は、太郎くんがいつも以上に頑張ってたくさんノートに書いていました。
太郎くんの頑張りを、ほんの少しでも、「授業最初の20秒」の褒め言葉が後押しできていたのだとしたら、嬉しい限りです。
特別支援教育スキルを学んでいてよかったなと思った瞬間でした。

  • 記録に出てくるお子さんの名前は仮名です。

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投稿: 塩谷 直大