開催日時 | 14:00 〜 17:00 |
定員 | 40名 |
会費 | 0円 |
場所 | その他 |
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研究発表「英学史・英語教育史研究における英単語集の定義
―他の英語教材との比較を通して―」
熊谷 允岐氏(立教大学 大学院生)
【概要】本研究の目的は、英学史・英語教育史研究における英単語集(以下、単語集)という教材が意味する範囲を明確にし、単語集が本来持っていると考えられる機能、およびその特徴を明らかにすることである。本研究は英語参考書研究、特に単語集研究に取り掛かるうえでの根幹を担うところであり、当該分野の研究における一方法論を提唱するものである。
単語集の研究を行うにあたり、それらの収集や分析が必要となるのは当然だが、これまでの研究において、単語集が一体どのような教材を指すのかについての議論は行われていない。しかし特定の領域の発達史を研究・考察するには、この点を明らかにすることが重要である。なぜなら「単語集とは何か」という問いに答えることが、収集した資料群を単語集だと立証し、より説得的に論を進めることに繋がると考えられるからである。
本研究では第一に以下の先行資料:
1. 『大阪女子大学蔵 日本英学資料解題』(1962)
2. 『マイクロフィルム版 初期日本英学資料集成』(1976)
3. 『大阪女子大学蔵 蘭学英学資料選』(1991)
4. 『神田佐野文庫所蔵 若林正治コレクション英学資料目録』(2018)
における「単語集」ということばの使われ方を概観し、比較を行った。その結果、「単語集」には複数の呼称があり、それらは明確に使い分けられているわけではないことがわかった。そして「単語」にかかわる用語の意味する範囲も研究によって不統一さが見られた。櫻井(2000)の指摘に倣えば、それは研究によって単語集を「広義」でとらえる場合と、「狭義」でとらえる場合に大別されるからだという。しかし、各先行資料がそのどちらを踏まえて教材を分類しているのかは判然としない。また、そのどちらかを念頭においていたとしても、それは一体どのような教材であるのかについての規定がないまま今日に至っていることが改めて確認された。
そこで本研究では第二に単語集の位置づけ、特には「狭義の単語集」とは何かを明らかとするため、単語集との混同が予想される教材、すなわち辞書・語彙リスト・単語帳との比較を通して、単語集の有する条件を導き出した。ただし、本研究で導き出した条件のみでは、単語集だと判断することが困難な英学書も複数存在する。そのような英学書に対しては、書名・体裁・時代背景などのさまざまな観点からより慎重な検討が必要となるものの、本研究で提唱する単語集の条件が、そのような検討をより円滑にするためのきっかけとなれば幸いである。
研究発表「日本の英文典における Complement の導入について」
川嶋 正士氏(日本大学 教授)
【概要】本発表では明治期の日本の英文典を調査した結果、Complement という文法用語がどのように紹介され、またどのような問題があったのかについて明らかにすることを目的とする。
故伊藤裕道氏の研究では、Complement という概念が日本で初めて紹介されたのは斎藤秀三郎が1884年に出版した William Swinton の小文典と呼ばれる New Language Lessons (1877)の訳述書であるとされるが、これを2年さかのぼる William Douglas Cox による A Grammar of the English Language for Japanese Students に Complement の記述が見られることがわかった。
1844年にロンドンで生まれたCox は、1876年に駒場農学校の英語教師として招聘され、その後東京大学予備門及び第一応答学校で教鞭をとるなど、1905年に没するまで日本の英語教育に携わった。
日本人学習者のための英文法書が刊行されたのは、来日から6年がたった時であり、それまでの日本での教授経験が生かされたと思われる。
Cox は、ドイツや英国において影響力があったが、当時の日本では認知度が低かったEduard Adolf Maetzner の文法書などを参照したが、Complement に関しては、Swinton 小文典に倣い、いわゆる主格補語のみを認めた。
発表においては、主として以下の点について考察する
・Swinton 小文典式の Complement の扱いの淵源と目的格補語について言及しなかった理由
・日本の英文典で目的格補語が見られるようになった経緯
問合せ 日本英語教育史学会例会担当
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